フリースクール vs 教育支援センター vs 通信制高校の違い
フリースクール・教育支援センター・通信制高校の最大の違いは、運営主体と目的、そして法的位置づけにあります。

ここでは、フリースクールと教育支援センター、通信制高校について「特徴」「メリット」「デメリット」の3項目をもとに解説します。
フリースクールとは?
フリースクールとは、不登校や学校になじめない子どもたちが安心して過ごせる居場所を提供する教育支援機関のことです。学校教育法に定められた正式な学校ではありませんが、子ども一人ひとりのペースや個性を尊重した多様な学習スタイルを提供しています。
特徴
フリースクールの特徴は、子ども主体の自由な学習環境と個別対応を重視した少人数制の運営体制にあります。文部科学省の統計によると、平均的なフリースクールの在籍者数は10名から30名程度で、スタッフ1名につき生徒3名から5名の手厚いサポート体制を受けられるのが特徴です。
年齢や学年の枠を超えた縦割りの交流が盛んで、異年齢集団での協働学習や相互支援が日常的に行われています。出席義務がないため、子どもの体調や精神状態に合わせて、無理のない範囲で参加できる環境です。
文部科学省が定める要件を満たしたフリースクールに通学すると、在籍校での出席扱いとして認定される制度も存在します。カリキュラムは施設ごとに大きく異なり、学習塾型、体験活動型、居場所型など多様な運営方針があります。
メリット
フリースクールのメリットは、学校の枠にとらわれない自由度の高い学習環境で、子どもの興味や関心に基づいた学びを実現できる点です。不登校で失った自信を回復し、新しい人間関係を築きながら社会性を育む場となっています。
少人数制のため、一人ひとりの個性や特性を理解したきめ細かいサポートを受けられるのが大きな特徴と言えるでしょう。学習の遅れに対する不安を抱える子どもに対して、個別の学習計画を立てて段階的に学力向上を図ることが可能です。
たとえば、学校では発言が苦手だった子どもが、フリースクールでの演劇活動や発表の機会を通じて、自己表現力を身につけるケースも。多様な価値観や生き方に触れることで、将来の進路選択の幅が広がり、自分らしい生き方を見つけるきっかけになります。
デメリット
フリースクールのデメリットは、利用料と法的な学歴認定がないため進学時に制約が生じる点です。月額料金が2万円から8万円程度かかるため、家計への負担が大きく長期利用が困難な家庭もあるでしょう。
フリースクール単独では高校卒業資格を取得できないため、大学進学を希望する場合は、高等学校卒業程度認定試験の合格が必要です。学習指導に力を入れている施設もあれば、居場所提供に重点を置いている施設もあります。また、認定制度によっては高校の出席扱いとなる場合もありますので、事前に確認しておきましょう。
しかし、これらのデメリットは通信制高校との併用や、学習面に特化したフリースクールを選択することで解決できます。費用面については、自治体によって利用料の一部補助制度や、所得に応じた減免制度を設けている場合があるため、事前に確認しましょう。
フリースクールについて:フリースクールの認定制度って?鳥取県独自の支援制度を知ろう!
教育支援センターとは?
教育支援センターとは、不登校の児童生徒とその保護者を支援するために市区町村の教育委員会が設置する公的機関のことです。以前は「適応指導教室」と呼ばれていた施設で、学校復帰を目標とした包括的な支援サービスを無料で提供しています。
特徴
教育支援センターの特徴は、公立機関としての信頼性と学校教育との連続性を重視した支援体制にあります。対象は小学生から中学生までの義務教育期間の児童生徒に限定され、在籍校との出席連携が自動的に行われる仕組みです。
施設には教員免許を持つ指導員や臨床心理士、社会福祉士などの専門職が配属されており、教育面と心理面の両方から総合的な支援を行っています。開所時間は学校の授業時間に合わせた平日の午前9時から午後3時頃までが一般的です。
利用料は完全無料で、教材費や体験活動費なども公費で賄われています。一人ひとりの状況に応じた個別支援計画を作成し、定期的な評価と見直しを行いながら、段階的な学校復帰を目指すアプローチが取られています。
メリット
教育支援センターのメリットは、公的機関として無料で利用でき、在籍校との連携により出席扱いになる点です。専門資格を持つ職員による質の高い支援を受けることができ、学校復帰に向けた確実な道筋を作ることができます。
家庭への訪問相談や保護者向けの研修会なども定期的に開催され、子どもだけでなく家族全体をサポートする包括的な支援体制が整っています。在籍校の教師との情報共有が密に行われるため、復帰時のスムーズな移行が可能です。
たとえば、神奈川県の教育支援センターでは、復帰前に在籍校での体験授業や放課後登校などの段階的なプログラムを実施しています。公的機関としての信頼性も高く、進学時の調査書作成や内申点への配慮なども適切に行われるため、安心して利用できます。
デメリット
教育支援センターのデメリットは、学校復帰を前提とした支援方針であるため、学校以外の選択肢を検討する際に制約がある点です。開所日が平日のみで土日祝日は休所となり、夏休みなど学校の長期休業期間中は閉所する施設が多くあります。
利用開始までに教育委員会での面接や審査があり、即座に利用できない場合も。一方で、民間のフリースクールや通信制高校などとの併用は基本的に認められていません。
教育委員会の相談窓口では利用前の詳細な説明を受けられ、家庭の状況に応じた最適な支援プランを検討できますので、事前に確認しておきましょう。学校復帰以外の進路についても、高校進学に向けた個別指導や進路相談を通じて適切なサポートを受けることも可能です。
通信制高校とは?
通信制高校とは、自宅学習を基本とし、レポート提出とスクーリングの参加により単位を取得する学校教育法に定められた正式な高等学校のことです。全日制・定時制と並ぶ高等学校の一形態で、卒業すれば高校卒業資格を取得できます。
特徴
通信制高校の特徴は、自宅学習を中心とした柔軟な学習スタイルと、年間を通じた入学機会の提供にあります。通信制高校では、卒業に必要な74単位を3年間以上かけて取得する単位制システムを採用し、留年することなく自分のペースで学習できる環境です。
スクーリングと呼ばれる面接指導を年間20日程度受ける必要がありますが、集中スクーリングやオンラインスクーリングなど、多様な形態から選択が可能です。15歳以上であれば年齢制限なく入学でき、中学校卒業見込みから社会人まで幅広い年齢層が学んでいます。
レポート学習では教科書と学習書を使用した自主学習が基本となり、定期的な添削指導を受けながら理解を深めていきます。通信制高校では、公立と私立で学費に大きな差があり、公立では年間5万円程度、私立では20万円から100万円程度の費用がかかるので事前に確認しておきましょう。
メリット
通信制高校のメリットは、正式な高校卒業資格を取得でき、大学受験や就職活動で全日制高校と同等の扱いを受けられる点です。自分のペースで学習できるため、不登校経験者や体調不良に悩む生徒でも無理なく高校教育を受けることができます。
年間を通じて転入・編入が可能で、全日制高校から移った場合は修得単位を引き継げるため、卒業時期の遅れを最小限に抑えられます。働きながら学ぶ社会人や芸能・スポーツ活動に専念する生徒にとって時間の自由度が高い環境です。
たとえば、IT関連の専門コースを設置する通信制高校では、プログラミングやデザインスキルを習得しながら高校卒業資格を取得できます。大学進学率も向上しており、私立の通信制高校では専任の進学指導担当者による手厚いサポートを受けられる場合があります。
デメリット
通信制高校のデメリットは、自己管理能力が求められるため、計画的な学習習慣がない生徒は単位取得が難しく感じる可能性がある点です。公立通信制高校の卒業率は約40パーセントと低く、途中で挫折する生徒が多いのが現実です。
同年代との交流機会が限られるため、友人関係の構築や社会性の発達に課題が生じる場合があります。私立の場合は学費が高額になることが多く、サポート校を併用すると年間150万円以上の費用がかかることがあります。
しかし、デメリットはサポート校の併用や学習サポートサービスを活用することで解決できます。多くの通信制高校では個別担任制やメンタルサポート体制を整備しており、定期的な面談や学習進捗管理を通じて、卒業まで継続的な支援を受けることが可能です。
フリースクール vs 教育支援センター vs 通信制高校の選び方と利用までの流れ
フリースクール・教育支援センター・通信制高校の選び方は、子どもの年齢と状況、家庭の教育方針によって決まります。
1人ひとりに合った選び方
フリースクール・教育支援センター・通信制高校の選び方では、子どもの性格と学習スタイル、そして将来の進路希望を総合的に判断する必要があります。集団生活に不安がある子どもには少人数制のフリースクール、学校復帰への意欲がある子どもには教育支援センター、自主学習能力が高い子どもには通信制高校が適しているでしょう。
判断する際は、家庭の経済状況と利用可能な時間帯を考慮することが重要になります。たとえば、共働き家庭では平日昼間の教育支援センター利用が困難な場合があり、フリースクールや通信制高校を検討する方が良いかもしれません。
人見知りが強く大勢の中では発言できない子どもの場合、1対1の個別指導を重視するフリースクールや通信制高校のサポート校がおすすめです。一方で、友達との関係性を重視し集団活動を好む子どもには、教育支援センターの小集団活動が適しています。
保護者と子ども双方の希望を整理し、見学や体験を通じて最終判断を行うことが成功の鍵となります。
地域別の探し方と選択肢の見つけ方
フリースクール・教育支援センター・通信制高校の探し方は、まず市区町村の教育委員会に相談することから始まります。教育支援センターの設置状況や利用条件、地域のフリースクール情報を一括して入手できるため、最初の情報収集窓口として最適です。
インターネット検索では「地域名+フリースクール」「地域名+適応指導教室」などで検索し、各施設の公式サイトから詳細情報を確認します。通信制高校については全国対応校と地域限定校があるため、通学の利便性と学費を比較検討しなければなりません。
たとえば、東京都では各区市町村に教育支援センターが設置されており、港区教育支援センターのように土曜日開放や親子参加プログラムを実施している施設もあります。NPO法人フリースクール全国ネットワークのウェブサイトでは、全国のフリースクール情報を地域別に検索でき、見学申込みや資料請求が可能です。
地域の不登校親の会や教育相談機関からの情報収集も有効な手段となります。
それぞれの利用までの流れ
フリースクール・教育支援センター・通信制高校の利用開始までには、それぞれ異なる手続きと準備期間が必要になります。
教育支援センターでは在籍校の担任教師からの紹介状と教育委員会での面談が必要で、利用開始時には個別支援計画が作成されます。フリースクールは施設見学後に体験参加期間があり、月単位での利用契約が一般的です。通信制高校は願書提出から入学試験、合格発表を経て入学手続きとなり、転入・編入の場合は前在籍校からの単位証明書が必要になります。
フリースクール vs 教育支援センター vs 通信制高校の費用比較
費用面では教育支援センターが完全無料である一方、フリースクールと通信制高校では相当な費用負担が発生します。

参考:不登校オンライン(https://futoko-online.jp/study/14727/)や各自治体、各施設のホームページの情報をもとに作成
フリースクールの月額料金は継続利用により年間24万円から96万円の負担となるため、経済的な計画性が必要です。通信制高校については公立と私立で大きな差があり、サポート校を併用する場合はさらに高額になります。
ただし、就学支援金制度やフリースクール利用料補助制度など、各種支援制度を活用することで実質的な負担軽減が可能です。これらの比較表を参考に、お子さまの状況と家庭の方針に最適な選択肢を検討してください。
フリースクール vs 教育支援センター vs 通信制高校の進路選択後のサポート体制
フリースクール・教育支援センター・通信制高校の進路選択後のサポート体制は、それぞれの設立目的に応じて異なる特色を持ちます。

教育支援センターは学校復帰支援に特化し、フリースクールは個別ニーズへの柔軟な対応、通信制高校は高校卒業と進学・就職支援に力を入れているという特徴の違いがあります。専門職員の配置状況にも違いがあり、教育支援センターには臨床心理士や社会福祉士が常駐し、フリースクールは少人数制による密接な関係性、通信制高校は進路指導専門教員による体系的な支援が提供されています。
長期的な視点でのサポート継続性については、それぞれに特徴があります。たとえば、神奈川県の教育支援センターでは卒業後3年間のアフターフォロー相談を実施し、首都圏のフリースクールでは卒業生同士のネットワーク構築支援を行っています。
私立通信制高校の多くでは大学受験予備校との連携や就職活動セミナーを定期開催し、卒業後の進路実現まで包括的にサポートする体制を整備しています。
まとめ
フリースクール・教育支援センター・通信制高校は、それぞれ運営主体と目的が大きく異なる3つの選択肢です。教育支援センターは学校復帰を目指す公的支援機関として無料で利用でき、フリースクールは居場所提供を重視した民間施設、通信制高校は正式な高校卒業資格を取得できる唯一の選択肢となっています。
お子さまの年齢や現在の状況、将来の進路希望に応じて最適な選択肢は変わるため、事前の見学や体験参加を通じて慎重に検討することが重要です。費用面では教育支援センターが無料である一方、フリースクールと通信制高校では相当な負担が発生するため、各種補助制度の活用を含めた長期的な計画が必要になります。
複数の選択肢を併用したり段階的に移行したりすることも可能であり、一度決めた選択肢に固執する必要はありません。専門機関の相談窓口や見学会を積極的に活用し、お子さまと保護者双方が納得できる進路を見つけてください。
ぜひ本記事を参考にして、最適な学びの環境を選択していただければと思います。