「開いてるよ」— 安心感を届ける、古民家校舎
つなかんスタッフ: 本日はよろしくお願いいたします。とても立派な一軒家ですね!
大橋さん: よろしくお願いします。天気が良くて眩しいですね(笑)。こちらがフリースクールの建物です。この一軒家を改装して使っています。

▲当日の様子。日差しが照り付けるなか取材に応じてくださいました。

▲フリースクールきょういく米子校の外観
玄関の横にある大きな木は金木犀で、昔からこの家を見守ってくれています。ウッドデッキもあって、天気の良い日にはピクニックをしたり、夏は水遊び、冬は雪が降ればかまくらを作ったりして楽しんでいます。
つなかんスタッフ: とても楽しそうですね!入り口の看板も、まるでおしゃれなカフェのようですね。
大橋さん: ありがとうございます。子供たちが「開いてるんだ」と一目でわかって安心できるように、あえて大きく看板を出しているんです。通い始めの子は特に緊張しますから、「いつでも開いてるよ」というメッセージを分かりやすく伝えたいと思っています。安心感はとても大切ですからね。

▲子どもたちが安心して入れるよう工夫された看板

▲代表の大橋さん。国内外でフリースクールを学んできた経歴を持つ
「今日、行こう」と思った時に。平日毎日・出入り自由という哲学
つなかんスタッフ: こちらはいつ開いているのでしょうか?
大橋さん: 平日は毎日、朝10時から夕方17時まで開校しています。土日はお休みですが、カレンダー通りに開けています。
つなかんスタッフ: たくさん開けていただけると、保護者の方の負担も少ないですね。
大橋さん: そうですね。そして、スクール名の「きょういく」は、ひらがなで「今日行く」と書きます。「“今日、行こうかな”と思える場所になればいいな」という願いを込めているんです。せっかく自分のタイミングで行こうかなと思った時に閉まっていたら、子供自身もショックでしょうし、ご家庭の負担にもなります。フリースクールで平日毎日開いているところは少ないのですが、そこはこだわって、変わらない時間で開けようと決めました。
つなかんスタッフ: なるほど。では、毎日決まった時間に通う必要があるのでしょうか?
大橋さん:いいえ、それがここの大きな特徴の一つで、いつ来て、いつ帰ってもいいんです。来るときも帰るときも、連絡は必要ありません。「午前中は朝起きれないから午後から来ます」という子もいれば、「今日は用事があるからお昼で帰ります」という子もいます。来る時間も滞在時間も、すべて子供たちが自分で選択できる。
つなかんスタッフ: 自分の心の声を聞いて、どうするかを決められる場所なんですね。
大橋代表: そうありたいと思っています。そのように、子供たちが自分で決められるというのが、この場所の良さかなと思います。
卒業生の作品が語る、ここで過ごした豊かな時間
(施設の中へ)
大橋さん: こちらは応接室です。ぜひ自慢させてほしいものがありまして…。この絵は、卒業生が「文化祭を開催しよう」となった時に、3ヶ月かけて描いてくれた作品なんです。
つなかんスタッフ: すごい!圧倒されますね。とても大きな絵ですね。
大橋さん: 私の身長くらいあります。テーマは「夢」だそうです。本人はもう高校に進学しましたが、「家に持って帰れないから、フリースクールに置いて、来る人みんなに自慢してください」と言われて(笑)。この作品は地元のテレビ局にも取材された、自慢の絵です。

▲卒業生が3ヶ月かけて描いた大作
ルールも活動もすべて子供たちが決める。「対話」から生まれる創造の場
大橋さん: では、子供たちがいる部屋にご案内しますね。ここが一番広い部屋で、特に名前はなかったのですが、いつの間にかみんな「大広間」と呼ぶようになりました。
(大広間に入ると、生徒さんたちが迎えてくれました)
生徒さん: こんにちは!ゲームサークルの部長です。部員募集中です!
大橋さん: 彼が部長です(笑)。ここはまだ開設して1年で人数も少ないので、「一緒に遊ぶ仲間が欲しい」という彼の思いから、「ゲームサークルを開いて募集したらどうか」という話になって。彼自身がチラシもデザインして、頑張って広報しているんですよ。
つなかんスタッフ: 素晴らしいアイデアですね!
大橋さん: 今、この大広間では、子供たちの企画でお祭りに向けた「迷路お化け屋敷」を建設中なんです。まだ牛乳パックが足りなくて、SNSで寄付を募集中です(笑)。
つなかんスタッフ: お祭りですか!それも子供たちの企画で?
大橋さん: そうです。「みんなでお泊まり会がしたい」という声が上がったのですが、予算が足りなくて。それなら「お祭りを開催して寄付を募ろう!」ということになったんです。何をするか、いつ開くか、すべて子供たちが中心のミーティングで決めます。もちろん大人も参加しますが、決定権は一人一票で平等です。
つなかんスタッフ: 活動のすべてが、子供たちの「やりたい」から始まっているんですね。
大橋さん: はい。フリースクールですから、子供たちとの対話を大切にしています。ルールも活動内容も、そうやって決まっていく。ただ、ミーティングで決まったからといって、絶対に参加しなきゃいけないわけではありません。その活動に参加するかしないか、そもそもミーティングに参加するかどうかも、子供たち自身が決めます。あくまで強制ではなく、自主性を大切にする。それがここの運営方針です。

▲お祭りに向けたミーティングの様子が書かれたホワイトボード
暮らしと学びを支え、一人ひとりにフィットする環境
大橋さん: こちらはキッチンです。給食はありませんが、家から材料を持ってきて自分で料理をする子もいますし、「フリースクール食堂」と名付けて、みんなでオムライスを作って食べたこともあります。今はおやつ作りに夢中で、お祭りで配るおやつを企画しているところです。

▲広々として使いやすいキッチン
2階は、より古民家の雰囲気が残っています。畳の部屋は、休憩したり、寄付でいただいた漫画を読んだり、みんながリラックスできる空間です。隣には学習室もあります。
つなかんスタッフ: 学習面で不安を抱える保護者の方も多いかと思いますが、どのようなサポートをされていますか?
大橋さん: ここではICT教材(タブレットやPCを使った教材)を導入しています。不登校の子の中には、家に教材がなかったり、どこから勉強を始めていいか分からなかったりする子がいます。ICT教材なら、学年に関係なくどこからでも始められる。逆に、得意なことをどんどん伸ばしたい子にも対応できます。
先ほど紹介した絵を描いた卒業生は、小学校からずっと不登校だったのですが、ここに通い始めてからICT教材で勉強し、たった3ヶ月で中学1年生の数学をすべて終わらせていました。自分のペースで学べるのが、この教材の強みですね。
他にも、子供たちが「秘密基地」を作っている押入れがあったり、寄付でいただいた本が山積みになった「本の倉庫」があったりと、子供たちは広い空間を自由に、創造的に活用しています。
「こどもたちは仲間を求めています」
つなかんスタッフ: 対象年齢はどのようになっていますか?
大橋さん: 小学校1年生から中学校3年生までが対象です。いわゆる義務教育課程の子が対象となります。
つなかんスタッフ: 今日は素晴らしい場所をご紹介いただき、ありがとうございました。最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
大橋さん: こちらは立ち上がってまだ1年の、本当に新しい場所です。だからこそ、子供たちは一緒に活動したり、学んだり、過ごしたりする仲間を心から求めています。

▲生徒がデザインしたゲームサークルのチラシ
ゲームサークルのチラシにある「もしよければ来てください。ぜひ来てください」という言葉が、今の子供たちの気持ちを一番表していると思います。
見学は随時受け付けていますが、初めて会う人にすごく緊張する子もいますので、まずはお電話かホームページの問い合わせフォームから、お気軽にご連絡いただけると嬉しいです。「見学したいです」の一言で大丈夫です。子供たちも新しい仲間が来るのを本当に喜びますので、ぜひ一度、この温かい空間を体験しに来てください。
つなかんスタッフ: 子供たちのワクワクするような毎日が目に浮かぶ、素敵なお話をありがとうございました。
【施設情報】
フリースクールきょういく米子校の詳細を知る!▶https://www.tuna-kan.org/dicts/10
- 名称: フリースクールきょういく米子校
- 所在地: 鳥取県米子市
- 対象: 小学校1年生~中学校3年生
- 開校日時: 平日 10:00~17:00
- ウェブサイト: https://www.kyouikutokoro.com/
- 見学・お問い合わせ: ウェブサイトのフォームまたはお電話にて、事前にお問い合わせください。